公文書の声に耳を傾ける力作
過去を語る文書が現在の政治の輪郭を作っていることを知る。そうした営みの一つに重要な公文書からの解明がある。
ポツポツと発見される文書から、過去と向き合っていかなければならないだろう。
過去の負の遺産をどう受け止めるのかが問われている。
かつては冷戦構造が国内政治に反映し、秘密資金を受け取ってでも、より多くの議席を確保しようとするという熾烈な政党間対立があったということが明らかに。
自民、共産、社会党……やはり彼らは貰っていた。日本の民主主義を歪めた“公然の秘密”を明らかにした選書『秘密資金の戦後政党史』2020年、3月の日経。
新聞書評からも興味津々。
1955年以降の戦後政治の中で、アメリカ・ソ連による自民党、民社党、共産党、社会党への資金提供の過程に迫る力作。
本書の魅力は、秘密資金の授受をめぐる会談内容を記した公文書の詳細紹介部分。
両国政府と資金提供を求める政治家たちの息詰まるやりとり。
両国政府とは米ソのことである。
資金を無心する佐藤栄作、川島正次郎、袴田里見、そして党勢が行き詰まり哀願するように振る舞う社会党政治家たち。
オモテのメディアが報ずる姿とは、趣を異にする。様々な政治家の「ウラ」の顔をのぞき見ることができる。
共産党も、新しい体制として出発した1955年は、他の年よりもソ連からの秘密資金の額が一桁多い。
宮本顕治ら国際派が主導権を握った。その後の戦後政治の基本的な政党間対立の原型が形成。
資金の授受という交渉過程に、その時期の政治状況を重ね合わせて読むことで、政治史のひだを読み取ってみることが、本書を読む醍醐味。
何となく感じていた通りのことが、
ハッキリと。