トトヤンの家庭菜園

小旅行、読書、TV番組感想、政治への関心、家庭菜園のブログです。(和歌山県)

サハリン

日露平和条約締結を悲願とした安倍氏27回首脳会談を行い、11回訪露するなど、プーチン大統領との交渉にのめり込んだ。

2014年のロシアのクリミア併合後も、米国の反対を押して対話を重ね、対露経済協力の「8項目提案」を発表。2018年には、国是の「4島返還」を放棄し、歯舞、色丹2島の引き渡しをうたった1956年日ソ共同宣言を基礎にした「2島」路線に舵を切った。しかし、ロシアは強硬姿勢を崩さず、ゼロ回答に終わった。立憲民主党野田佳彦元首相は、長野県で行った参院選の遊説で、「プーチン大統領に経済協力を提案し、北方4島の返還交渉が進展するという甘い幻想の下に進んできた。でも、資金はどんどん吸い取られたけども、島一つどころか、石ころ一つ返ってこなかった」と酷評した。


袴田茂樹青山学院大学名誉教授も安倍外交については「プーチンはそれを強者ロシアに対する弱者日本の卑屈な態度と侮蔑的に見ていた」と指摘した。


78日に凶弾に倒れた安倍晋三元首相に対して、ロシアのエリート達が次々に弔意を示し、対露外交への貢献を高く評価していた。プーチン大統領昭恵夫人と母の安倍洋子氏に弔電を送り、「私はシンゾーと定期的に接触していた。そこでは安倍氏の素晴らしい個人的、職業的資質が開花していた。この素晴らしい人物についての記憶は、彼を知るすべての人の心に永遠に残る」と突然の死を悼んだ。


安倍氏は亡くなる1カ月半前、英誌『エコノミスト』(526日付)のインタビューに応じ、「プーチンに政治資産と時間を費やしたことを後悔していないか」との質問にこう答えた。「後悔はまったくない。私は常々、北方の脅威を減らし、南西部の戦力を強化すべきだという考えを持っている」
「私はロシアと平和条約を結び、北方4島の問題を解決するために交渉することが義務と考えた」
「今、ロシア人は北方領土の日本への返還に圧倒的に反対している。このような状況では、ロシアの指導者が国内で強力な権力基盤を持たなければ、領土問題を解決するのは困難だ。私はプーチンが適任だと考えた。日本との平和条約締結の中長期的なメリットを理解してくれると信じていた」
「しかし、残念ながら、プーチンといえども、絶対的な権力を持っているわけではないし、1人ですべてを決めることはできない。強い反対を前に、躊躇していたのだと思う」


安倍氏は退任時の会見で、平和条約交渉が挫折したことを「痛恨の極み」と述べたが、交渉の細部は語っていなかった。

英誌への発言には、交渉失敗を取り繕つくろう「後付け」の要素もありそうだ。


岸田首相はロシアのウクライナ侵攻を「許されざる暴挙」と非難し、欧米諸国と連携して厳しい対露制裁を発動し、安倍融和路線を撤回した。北方領土問題でも、「ロシアの違法占拠」を非難し、4島返還に戻す姿勢を打ち出した。岸田首相が6月、国会で北方4島の返還を目指す考えを明言すると、安倍氏は周囲に、「(4島返還と)言って返ってくるなら、みんな言う」と漏らしたという(北海道新聞79日付)。岸田首相が安倍路線を簡単に撤回したことに、安倍氏は不満だったようだ。


安倍氏があれほど尽力した日露交渉も見果てぬ夢に終わった。プーチン大統領の弔電が、外交儀礼を超えてやや感情的だったのは、安倍氏の好意に報いなかった気まずさが感じとれないこともない。


安倍氏という「重し」が取れ、日露関係はさらに悪くなるほかないのかもしれない。

拓殖大学特任教授名越 健郎(なごし・けんろう)

次には


佐藤 優(作家・元外務省主任分析官)の評価


どこまでもリアリズムで戦略的だった安倍外交

佐藤 優


プーチン大統領は、感情を文章にして表すことがまれです。このような弔電を打つことは珍しく、安倍氏に対して抱く心の底からの親愛の情が、率直に表明されていると感じます。


翻訳した文面は、以下の通り


インテリジェンス機関の元締めからの弔意文


お悔やみの全文は次の通り。

われわれは、安倍晋三元日本首相の早すぎる死去に関連して、深いお悔やみの言葉を述べる。
安倍氏は常に、輝かしく、また権威ある日本の政治家の一人であり、自国や国外において当然の敬意を受けてきた。
われわれは彼を、ロシアとの関係の発展のために多くのことを行い、両国民間の相互理解の顕著な改善の実現を心から願い、課された目標の達成のために労力、時間や自身の健康を惜しまなかった、優れた政治家として記憶にとどめるだろう。
われわれは、安倍氏の近親者や全ての日本国民とともに、この喪失の悲しみを共有している。

NP・パトルシェフ、ロシア安全保障会議書記  (79日「ラヂオプレス」[RP])


その他、ヴャチェスラフ・ニコノフからの弔意。


〈今日、安倍晋三・元日本国首相が暗殺された。安倍氏は、日本で最も高名な政治家の1人である。この人物は、日本の歴史で誰よりも長い期間、首相を務めた。またロシアと日本の関係でも、特に経済関係で多くの業績を残した。そして本気で、領土問題の解決に取り組んだ。〉〈安倍氏は、日本で最も偉大な政治家の1人である。最も偉大だと言ってもいい。過去数十年の日本の歴史で、安倍氏ほど長期間、首相の座にとどまっていた人はいない。彼は日本政治で時代を画した政治家だった。安倍氏は、日本で最も影響を持つ政治家一族に属している。日本で影響があるのは、第一世代の政治家ではない。安倍氏の父は政権党である自由民主党の幹事長で、外相だった。安倍氏自身も力のある政治家だった。安倍氏は日本では珍しい、自立した政治家だった。私は首相になる前の安倍氏と会ったことがある。当時、年2回、ロ日間の副次的チャネルでの対話が少なくとも年2回行われており、私もメンバーだった。安倍氏がそれに参加したことがある。安倍氏は独自の思考をしていた。日本の知識人と政治家は、しばしば米国の立場を自分の見解のように述べる。しかし、安倍氏はそうではなく、自らの理念を持っていた。もちろん安倍氏は反米ではなかったし、親ロシアでもなかった。偉大な政治家として独自の行動をした。現実としても、ロシアと日本の関係発展のために重要な役割を果たした。プーチン大統領安倍氏の母親と妻に、感情のこもった哀悼の意を表明したのも偶然ではない。実に偉大な政治家で、日本の歴史に道標を残した。〉


感情を表さないプーチンが、気持ちをあらわにした

ともいえる弔電


尊敬する安倍洋子様
尊敬する安倍昭恵

あなたの御子息で、夫である安倍晋三氏の御逝去に対して深甚ある弔意を表明いたします。犯罪者の手によって、日本政府を長期間率いてロ日国家間の善隣関係の発展に多くの業績を残した傑出した政治家の命が奪われました。私は晋三と定期的に接触していました。そこでは安倍氏の素晴らしい個人的ならびに専門家的資質が開花していました。この素晴らしい人物についての記憶は、彼を知る全ての人の心に永遠に残るでしょう。


尊敬の気持ちを込めて ウラジーミル・プーチン


ロシアのウクライナ侵攻停戦仲介に

安倍元首相のお出ましは有りやなしや

囁かれているうちに凶弾に倒れられてしまわれたが、プーチンを止められるなんてことはありえななかっただろう。

それ以前に諦めずに交渉してきた日露交渉を

安易に批判する声ある中で、

少なくとも、その労には敬意を表したい。