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トトヤンの家庭菜園

小旅行、読書、TV番組感想、政治への関心、家庭菜園のブログです。

故郷カルメラ星を想う

そんなことをブログに載せれば怪しまれるだけではないか。言ったあいつの厳しい眼差し。はるかかなたのカルメラ星から、この地球にたどりついた同志の眼なのだ。多少、地球人になりきるのに疲れの出始めていた彼だ。「君から教えられた日本の歌謡曲。歌詞をかみしめて耳を澄ませて聴いてみると元気が出てきた、言うところのよさにも気付いてね。」それはスマップのトライアングルという比較的新しい曲のことだ。「そうかい。気に入ってくれたかい」歌詞が良かったので励ます意味でエジプトの彼にも勧めてみたのだ。俺たちの目的はカルメラ星の遺伝子を残すこと。彼はエジプト、自分はというと日本に舞い降りた。旅立つときにはそのような国名を知る由もなく、むこうでの呼び名は別だった。地球にたどり着いてからはお互い、交信を交わすことは禁じられてもいた。交わすときは必ずカルメラ星を経由すること。まるでゾルゲスパイ団もどき。カルメラの遺伝子の特性はたどりついたその国のアイデンティーティをも吸収してしまうということなのだ。「君はホームシックにならないんだね」それはカルメラ星に置いてきた妻子のことなのか。俺のほうはもうカルメラ星の消滅をもって一応の気持ちの整理はつけてしまっている。もう経由すべき故里の星もないのだから。今はこうして自由に彼とひざ突き合わせてもいる。「エジプトは政変で大変な状況でもあるだろう。十分な用心をな」「ナセルの時代が懐かしいの声を聞くよ。」それはわかるのだ。中東アラブの盟主として多くの民衆に親しまれてもいた。ナセル大統領が突然に亡くなったときはそれはそれは大勢の慟哭の民で埋め尽くされるほどだった。地球上にはこれだけの沢山の国があることで驚きもした。それにいたるところで戦火は絶えない。カルメラ星は2カ国だけだった。ある国の首相なんか、バイの会談と横文字でへらへらニタニタ簡単に言ってくれるけれど、二国間の交渉ってそう簡単ではないのだ。カルメラ星でいやというほど経験している。あのときはいっぽうの北半球の冷害で片方の国の食料が全くできなくなってしまったのだ。それを切っ掛けに世界政府に移行したのだった。一時はひやりとする事態も。それは略奪が近く起こるだののデマや噂だった。食料の枯渇は生存の危機に直結する問題。武器以上に食料が交渉事にも使われ始めていた。だがあのときは、カルメラ星はじまって以来、両首脳が粘り強く智慧をだしあって冷静に対処したうえの結果だった。「ところで教えてくれたあの歌詞にはとてもメッセージ性を感じている。」「わかるよ、ここんところだろ、(遠い空に 誰かが祈っていたり)(僕の肌 キミの母 僕らの愛は蒼く浮かぶ ちっぽけな惑星に 舞い降りた奇蹟)(わずかな苦しみも知らぬまま 後に生まれ 生きる僕ら受け継ごうその想い 声の限りに伝えるんだ)スマップの歌声(大国の英雄や 戦火の少女それぞれ重さの同じ 尊ぶべき生命だから精悍な顔つきで 構えた銃は他でもなく 僕らの心に突きつけられている)」「そう、このフレーズを何度もくちづさむうちにこの地球にたどり着いた初期の目的を再確認している自分がいるんだ。まさしく、ちっぽけな惑星に舞い降りた奇蹟をね。」「君は地球にたどり着いたということに特に意味を感じている。そこが日本国ということで」「ああ、そのとおりだ」「でもオバマ大統領の核廃絶へむけてのプラハ演説のとき、日本の明確な主張も、聞けなかったんだよな。」
 「でも今ではそんなことはたいしたことではないんだ。」「ふーん」「君に教えたこの歌詞のように、そうさ(無口な祖父の想いが父へと 時代を跨ぎ)というそこのところに気付かされる。そもそもの俺たちの目的はカルメラ星の非戦、平和の遺伝子を残すというところにもどってくるんだ。俺も舞い降りた当初はこの国を低く見るというか自分の惑星と比べてみてもみくびっていたところもあったんだ。何故かって、そりゃ、君にも指摘されたとおり、日本での不幸といえば、幼児虐待や、高齢者をねらったオレオレ詐欺。そんな事件ばかりだからね。民度に疑問附もあった。中東と違って弱いものがさらに弱いものを襲う。まさに形を変えた経済テロじゃないか醜悪だねと君が言っていただろ。ところがエジプトでの騒動が起こりだしてから丹念にくまなく地球上の歴史にも関心を寄せてから、それから日本のよさも認識することになったんだ。ナセルが西欧列強と角突き合わせてスエズ運河を盾にしたときその仲介役として西側の英米から頼りにされたあるカナダの外交官の半生をきっかけにね。」ナセルは西側にとってもコワモテの相手だった。仲介役として彼ハーバート・ノーマンという男に白羽の矢があつまった。理由はその彼はその前に連合国側の一員として日本占領期には日本の民主化にも成功をおさめていたからかもしれない。ひざを交えたアラブ・エジプトの盟主ナセルも彼にすっかり魅了されてしまうのだ。こうしてスエズの危機は彼の仲介もあってか、好転していく。そのまま学者でいけば、丸山真男らの知友を得て明治維新とか江戸期、安藤昌益論だけに限ることなく室町鎌倉期とさかのぼって刺激的な学問領域も開拓されたかもしれない人物。しかし、象牙の塔で住まうことの許されないその後の人生。国際政治の危機に彼の力量が借り出されていくのだった。日本占領期時代には彼は天皇制を問題視する連合国の意向の多いなかで常に擁護の側にまわったという。連合国の多くは勝った勢いから慢心で覆われているという雰囲気の中。そのなかに在って彼は日本国をどう見ていたかだ。おお、西欧の連中よ、かつて世界史に類をみない立派な明治維新を行った国、日本国なのだぜ。わかってるいるのか。という感情。限りなく勤皇の志士の伝統を汲む日本に尊敬の念も持ちながら、あらゆる横槍をかいくぐって日本の尊厳を損なわない形での戦後処理を模索していく西欧人だったのだ。彼は日本の復興を信じていた。「カルメラ星人が、地球人の学者の影響を受けているってか?おかしいぜ。君はいつから主義者に?」「俺は皇国主義者になったわけでもないよ。舞い降りたところが日本だからってなにも。今は20世紀の哲人スペインのオルテガの言葉を聴いている。」大衆ではないなにか卓越したものに奉仕するように生をつくりあげるのでなければかれにとって生は味気ない。高貴さは権利によってではなく自己への要求と義務によって定義されるものというそれだ。カルメラ星でもそうだったじゃないか前世代達の英断の数々を俺達は見てきている。カルメラ星、消滅までのごく前の話。消滅は想定内のこと。時計の針は生物学的死が近づいてきたようなものに過ぎなかった。大事な因子を残そうと、そして、そのタネを植える畑としての探索が続いた。私達は地球という惑星を知らされ使命を告げられた。俺達がなぜ選ばれたかって。そりゃ、その話の可能性を信じたのが俺達だけだったからさ。カルメラ星での高貴ある解決の歴史をこの惑星でも活かさんと。俺はスマップの曲に次いで、哲学ではオルテガに執着しているんだ。オルテガは決して歴史の絶対的な予定説を信じなかった。短絡的な発展史観などは信じなかった。(わたしは逆に、あらゆる生、したがって歴史的生は、純粋な刹那によって構成されているものであり、その一瞬一瞬はそれに先行する一瞬に対して相対的に未確定であるために、現実はその一瞬において逡巡し、-カ所で足踏みし、多くの可能性の中のどれに決めるべきかに迷うものであると信じている。この哲学的逡巡こそが、あらゆる生的なものに、まごう方なき不安と戦慄を与えている)と。「この哲学的逡巡とは、優柔不断とは似て非なるものだと思うんだ。」(まごう方なき不安と戦慄)の緊張感の中から(善)を探り当てる力の源泉。カルメラ星での数々の成功がそうだったじゃないか。経済の悲観的な観測に左右されたり、ペシミスティック、ニヒリスティックな心象風景が続いていても、かの惑星同様この惑星でも達成は可能だと。「俺はノーマンが日本を愛し信じたように日本の可能性を改めて信じてみるよ。」