アンズの収穫を済んで、
かすかに思い起こす小津安二郎監督の
ことば。以前に読んだ、エッセイからの数行。
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シナ事変のときの修水河の渡河戦の時のことを思いだしていた。
ぼくは第一線にいた。
壕の近くにアンズの木があり白い花が美しく咲いていた。
その中に敵の攻撃がはじまって、追撃砲がヒュンヒュンと来る。タンタンタンと機関銃や小銃の間を縫って大砲が響く。
その音や、風で、白い花が大変美しくハラハラと散って来る。ぼくは花を見ながら、こんな戦争の描き方もあるのだなと思ったことがある。
悲しい場面でも、時に明るい曲が流れることで、かえって悲劇感の増すことも考えられるのだ。
以前に通ったことのある小津安二郎資料館