日本はどちらの背中を押していたかを知る
核兵器禁止条約の第3回締約国会議が閉幕した。核廃絶を求める国々が「核なき世界」へ結束を確かめた一方で、条約に不参加の核保有国や「核の傘」の下にある国々との分断も浮かび上がった。
条約発効から4年。活動を重ねるごとに、理想を実現する難しさを突きつけられていると言ってよい。唯一の戦争被爆国であるにもかかわらず不参加を続ける日本も、責任の一端があるのではないか。
世界的な核リスクは高まる一方にある。ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザでの人道危機など国際法を軽視する事例が続き、安全保障のために各国の核抑止論は強まっている。昨年8月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は最終文書を採択できないなど、核軍縮の動きも停滞気味だ。
核への依存が強まるほど、核そのものを「絶対悪」と位置づける核禁条約の意義は増す。昨年、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)にノーベル平和賞が授与され、活動機運が高まった中で開かれた第3回締約国会議だった。
会議では、胎内被爆者の浜住治郎さんが演説するなど核の非人道性を共有。採択した政治宣言は、「核なき世界」への決意強化を掲げ、核抑止論は人類の存続を脅かすとして核保有国に核軍縮、核廃絶を求めた。人工知能(AI)の核兵器利用の危険性も指摘した。それらの意義はもちろん大きい。
だが、米ロ中などの核保有国や北大西洋条約機構(NATO)の加盟国が一線を画する姿勢は続き、過去2回はオブザーバー参加したドイツ、ベルギー、ノルウェーも参加を見送った。欧州に対するロシアの脅威が高まる中、NATOの団結を重視したとされる。
また会期半ばには、フランスのマクロン大統領が核抑止力を欧州全体に拡大させる構想を公表した。
条約の方向とは正反対の核軍拡の動きである。かねて条約参加国と不参加国との間に分断はあり、参加国側は「対立ではなく補完し合う関係」と対話を探ったこともあったが、その溝は深くなっている。核禁条約は早くも岐路に差しかかっているといえるのではないか。
問われるのは日本のスタンスだ。被爆国であり、「核なき世界」を掲げ、核禁条約の理念は共有する。核保有国と非保有国の「橋渡し役」も自任する唯一無二の存在だ。
しかし、その役目を果たしているとは言い難い。これまで2回の締約国会議にオブザーバー参加すらせず、被爆80年の節目、被団協のノーベル賞受賞がありながら、今回の会議も同様だった。
政府は、自国の安全保障で核抑止が不可欠だとの現実論を強調する。米国頼みの現実は確かにあるが、何らかのアクションを起こそうとしない状況を、核非保有国はどうみているだろう。
核廃絶の動きが先細りになるようなことがあってはならない。日本は存在感を発揮する必要がある。
高知新聞社社説より、
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