2010年代以前、中国の国力が今より強くなかった胡錦濤国家主席の時代までは、国際社会での信頼獲得を重視する「低姿勢・協調型」でした。しかし、2013年以降、習近平国家主席の時代になると、戦闘・攻撃的な外交=戦狼(せんろう)外交へと変化しました。
今回の薛剣氏の発言も「典型的な戦狼外交」です。
関係する産業界の声
今後の日中関係はどうなるのか?
▼レアアースなど供給停止
▼インバウンド減少
▼日本人駐在員の拘束リスク
▼海産物など貿易全般の打撃
など最も懸念されるのがやはり経済面の影響です。
従来、こうした中国との関係に懸念が出たときには、中国とのパイプがあると言われている公明党がフォロー役を担っていましたが連立解消によりそれは期待できません。
現状は発言を撤回すれば保守派の反対にあう一方、撤回しなければ問題が拡大するという状況ですが、今後の中国の動きを注視しておく必要がありそうです。
今回の薛総領事との事件は、高市首相の発言のせいで起きた偶発で単発の事件では決してないのです。だからこそ、高市首相は国会で台湾についての「発言を撤回する意図はない」と述べた。これは国際的に見ても正しいアプローチでしょう。
中国との平和の道は宥和でも挑発でもなく、北京の飴と鞭に耐えられる多国間連帯に裏打ちされた、ブレない外交姿勢を貫くことが肝要です。戦狼外交に立ち向かい、「チャイナ・マジック」に抵抗することは、野党や一部の識者が騒ぎ立てるような軍国主義や歴史修正主義ではない。高市首相は、迅速にオーストラリアやカナダと連携し、次の「鞭」に備えるべきでしょう。
次に内政にふれれば、最初から「合意ありき」の交渉だった。「合意してしまえば、後は何とかなるだろう」といういつもの自民党の交渉パターン。
いつの間にか議員定数の削減が最大の焦点になってしまったことは誤算だったかもしれない。鈴木幹事長は、ついに「今国会で成立させることは困難だ」と先送りを宣言した。高市首相も難しいと繰り返している。「法案を提出し成立を目指す」という表現は幅があります。
自民党にとって公明党が抜けた後を埋めるためには、維新の会と連立がどうしても必要だった。首班指名まで時間がないなかで、連立合意をつくるための交渉は、実質的に5日間しかなかった。首班指名を確実にするには、何でも飲み込む姿勢だったのを見て、維新は、悲願の大阪都構想(いまは副首都構想)や看板政策「身を切る改革」の象徴「議員定数削減」を絶対条件として出した。
連立相手の日本維新の会が次第に重荷になりつつあります。
総裁選では小泉進次郎氏を支持したある閣僚経験者含め「自民党内では高市首相へのしらけた空気が強まっている」と党内の現状を吐露。
「首相だけでなく、党内でなんの議論もしないまま、閣僚や党幹部が勝手な発言をしている。誰も真剣に高市首相を支えようと思っていないからだ。そもそも自民党内の意見をロクにまとめもしないまま維新とパタパタと連立合意を結んでしまった。議員定数の一割削減なんて、自民党内に本気で成立させようという議員は一人もいないという実態。
参院自民党にも事態を打開しようという動きは見られない。むしろ公明党離脱の一因にもなった萩生田光一氏の起用といい、首相は裏金関係議員に甘すぎると一連の人事に疑問を呈する参院幹部もいる。少数与党という現実の中で野党の要求も受け入れて行かないと国会は動かないが、司令塔の鈴木俊一幹事長など自民党執行部は調整力不足を露呈している。台湾有事が日本の有事になるケースもあり得るという発言もしたが、安倍さんならあんな不用意な答弁はしなかった。中国側の不穏当な反応も問題だが、何を日本有事と認定するか具体的に例を挙げるなんて、中国に手の内をさらすようなものだ。自分の応援団の人気取りのためかもしれないが、まず自民党内をまとめないと、石破内閣以上に何も実現できなくなる可能性大。
最初は、現実路線で持論を封印していた高市首相だが、やはり応援団の期待にも応えないわけにはいかない。このところの国会論戦で踏み外す答弁が目立つのも、つい彼らの顔が浮かぶからでしょう。本当の応援団なら、高市政権が長く続くようにむしろ謙虚な姿勢でいるべきでしょうに。
「ついに高市が天下を取った」
「中国と財務省を屈服させろ」
「高市の敵は日本の敵」
以前から高市首相を応援してきた月刊誌などには、強硬保守派の論客や政治家の勇ましい言説が溢れている。マスメディアやSNSでも保守派は元気一杯だ。
外交も内政も、いくら勇ましいスローガンを並べても、それが実現できなければ、たちまち支持率は低下し、政権運営は難しくなる。現状では、野党も高市内閣の支持率の高さにとまどい、批判にも及び腰だ。まして、内閣不信任案で政局の打開を図ろうという気概は全く感じられない。選挙を望んでいないからです。
この状態であれば野党やマスコミがどんなに批判しても、高市政権を倒すことは難しい。しかし自民党や維新の会、つまり与党が一体となって支えなければ、現実に国会を乗り切ることは難しいといえるでしょう。
そして難しくなると国民が望む物価高対策などの実現も困難になります。その時高市首相への期待も失われ、支持率も下がることは避けられないでしょう。つまり、高市首相にとって、一番厄介な足を引っ張りかねない存在は維新、野党でもマスコミでもなく、あるいは中国でも財務省でもない。それは実のところ、身内の与党なのです。維新といういわば爆弾を抱えてしまったこと。優先課題でもないことでせっつかれてしまうこと。
志や熱意がどんなに高くても、どんなに努力を重ねたとしても、政治は結果だけで評価されます。動機が素晴らしくても、懐具合での結果が国民有権者に評価されないときは、その批判は甘んじて受けなければならないのです。時には、周りの者の失敗の責任も引き受けなければならないはずなのです。