
クラクション鳴ったからね。無事何事もなかって、よかった。心配したよ。
僕(鹿)は、横断歩道を赤信号で渡ってくるおばちゃんが気になったんだ。
それで、歩道を見ていたんだ。
ぼくの耳の動きを察知した、先ほどから僕と語っていた青年も気にしてくれていたよ。
僕は、ただただ、この公園にやってくる観光客の人が楽しんで安全に帰ってくれれば、それでいいんだ。僕たち、シカの様子もみてくれてね。
いままで、寄り添うように語っていた青年とは、久方ぶりの再会でねえ。
原子力開発機構で、はたらいているみたいだった。言葉と心をつくして、こちらは人間の発する言語ではしゃべれなかったけれど、理解はしたよ。
当時の青年の迷いもふっきれて、すがすがしい再会だった。
就職に際しても、いろいろ周囲から、なぜ、そのようなところに行くの。そういう視線もあったみたいだ。その手前、悩んでいた節も。
それにたいして僕は。いったんだ。意味があるよ。青年が、それまでに学んできた学術的なこと、
深くは知らないまでも。
僕は言ってやったんだ。
廃炉って、簡単じゃないんだと漏らした青年のつぶやき。それに対して
きっと、君の力がいるよ。だから、採用通知が来たんだろ。
廃炉にも新しい知見がいるはず。
世間がどうだこうだなんて、気にすることないよ。誰が、どう思おうと、その廃炉にむかって、
放射能の不安に向き合いながら、その収束、完全、廃炉に黙々と職務を全うすることに、意味がある
それは、なかなか、願っても叶うような職でもないよ。その道に、
うらやましくもある。
出会いの頃に言った会話を思い出す。
