企業のマネージャーや法律家、心療学者、デザイナー、コンサルタント、ジャーナリストといった、いわゆる頭脳労働者らの流失。ただ、多くのロシア人の若者らにとって、国外に脱出することは決して容易な決断ではなかったに違いない。欧米諸国の厳しい経済制裁により、ロシアからの国際便は激減。そのうえ、航空券の価格は数倍に高騰。中には、子供が将来的にロシア国内で徴兵される事態を懸念し、子供だけを海外に脱出させたケースも。主な出国先は旧ソ連のジョージア、アルメニア、そしてトルコだ。これらの国が選ばれたのは、主にロシア人がビザの取得が不要で、比較的渡航が容易だったためだ。決してこれらの土地を知っていたからではない。そこからさらに第三国に出国することを目指すには、ビザの取得や資金の確保などで、さらなるハードルが待ち構えている。このような若者の脱出に対し、プーチン大統領の反応は極めて冷酷だ。「われわれは本物の愛国者と裏切り者を見分けることができる。そのような連中は、誤って口の中に飛び込んできた〝小バエ〟のように、路上に吐き捨ててしまえばいい」自国民を「小バエ」と呼ぶプーチン氏の思考の異常さ。ウクライナ侵攻に賛同できない多くのロシア人に絶望的な思いを与えたに違いない。日本を含めた世界はロシアとの対峙を覚悟し、経済制裁をいっそう強めつつあるも、その先は見通せない。もはや「侵攻前」には戻れない。安全保障、エネルギー、経済……不可逆の変化と向き合わねばならない現実。これ以上、戦火を広げないために、世界は、そして日本は、そして、国民、市民は。何をすべきなのか。核の威嚇の脅威がかつてなく強まりつつあるこのご時世。
核の脅威が益々の高まりを迎える中、置かれている分断の世相を記す。
ウクライナ侵攻後に、ロシアを脱出した若者らの胸の内。祖国ロシアに対する絶望的な思いが込められている。「私の子供たちには、開かれた世界で成長してほしかった。〝侵略国家の国民〟として生きてほしくなかった」「ロシアは今後20年間は、普通の世界の仲間入りはできないだろう。僕は若い。20年間も無駄に生きたくはない」「人間らしく生きていきたかったから、ロシアを去った。プロパガンダはロシア国民、そして私の隣人からも理性を奪ってしまった」侵攻から約1カ月間でIT分野を中心に約30万人の若い有能な人材が海外脱出。プーチン大統領は侵攻を支持しない人々に挑戦するような侮蔑の言葉を投げつけ続ける。「裏切者」「ハエ」国民を「ハエ」とののしるプーチン 。ロシア去る若者たち。ウクライナ侵攻後、どれくらいの人々がロシアを去ったのか。ロシアから国外に出た国民の数が388万人にのぼったとの統計を報じた。(オンラインメディア「ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」)ビジネスや観光などすべての国民を含む数字で、そのまま国外脱出者数とみなすことはできないが、それでもウクライナ侵攻への懸念が急激に高まっていた時期と重なっており、そのうちの多数がロシアを離れた可能性がある。さらに今後、ロシアに「帰国しない」との回答は27%で、「長期間離れる」との答えも41%あった。出国が「一時的なもの」とする回答は12%に過ぎず、成長産業を担う多くの若い人材が、ロシアを完全に捨て去る決意を固めたことになる。今後ロシア経済に深刻な影響を与えていくのは必至だ。
他方、北朝鮮を舞台にしたミステリ。
あくまでもフィクションとしながらも、脱北者の話をもとに書いているということで、北朝鮮のリアルを伝えてくれている。出身成分と言う名の階級社会。抗うことができない絶対的な権力の中で、ある村で起こった殺人事件の解明がどう、展開されていくのか。信じるに値する真相解明に向けての捜査がされていくのか。主人公の内面葛藤を通して、恐怖社会を炙り出してあまりある。
いっそうの軍事的同盟化の、流れの高まり。
北朝鮮の、民心は謎めいて、情報も限られているとはいえ、上記のロシアの、若者の憂いと、全く異なるとも思えない。脱北者からの内面吐露もある。
それらと照らし合わせても、単にミステリ小説と言わせない、迫力。一読値する、オススメの、書です。
「出身成分」