戦争を知らない世代の自分が、
貴重な体験の記述に
触れることによって、
少なくとも、
戦争を超えてきた世代が、
なにを見、
どういう気持ちで
振り返っているかを、(死と隣り合わせの大陸の日々と
それがために背負ってしまった
苛烈な帰国後の出発とを照らし合わせるようにして
語られていく内容で)
知ることができた。
目次を記しておきます。
【第一章 米国からのスパイ容疑】
米国・極東軍司令部へ/米ソ冷戦の対立のなかにあって/スパイ容疑を掛けられて/皮肉な運命に対する働実/ソ連による思想教育
【第二章 幼少時代の郷里】
亀川の大将/土蔵に閉じこめられて/ガキ大将から優等生へ/海南中学/授業料も払えず/近づく戦争の足音
【第三章 陸軍士官学校】
スパルタ式教育/同郷人たち/四種予防接種がもとで/孫呉で再び病に伏す
【第四章 人生の落馬】
陸士本科への幻の入学/再び希望の光が/都落ち/熊野灘での療養/陸軍省の委託学生を拒否され
【第五章 東亜同文書院大学】
竜田丸で上海へ/頭蓋骨を盃にして/太平洋戦争が始まる/本間予科長留任運動/学徒出陣
【第六章 特務機関の諜報班長として】
当陽県での宣撫活動ノチャムス特務機関/白系ロシア人の工作員/ソ連へ潜入する/イワンの自立
【第七章 敗戦の前後】
知られざる重慶に対する裏工作/通化へ撤退/チャムス防衛/死の行進/逃避行の修羅場/チャムス特務機関の終焉
【第八章 捕虜収容所】
ワン・チンパオは死んだ/ソ連抑留の始まり/過酷なシベリアの冬/労働拒否で監禁室へ
【第九章 “反動”をあぶりだせ】
密告者/草地大佐と囲碁/白樺の肥やし/取り調べ
【第十章 生と死の境】
倉庫番に起用/瀬島龍三氏との出会い/カザン国際収容所ヘ/イワンとの再会/首実検にかけられる/ナホトカへ/スターリンに対する感謝の署名を拒否する
【第十一章 復員と戦後】
引き揚げ船/アクチブに対する天課/米軍の取り調べ/執勘な監視が私のうえに/戦犯G項による公職追放/米軍へソ連の情報を提供/「朝鮮戦争に協力せよ」/朝鮮戦争への協力を拒否した後の米軍の反応
【終章 旧軍人たちの戦後】
戦争の傷痕/戦友たちの戦後/ビザ交付を拒否/アクチブの戦後/夜の記憶
シベリア抑留時の変節奸アクチブと称されるやつらが
戦後、代々木にいきつくところを
眺めながら、怒り慟哭するくだりが
印象的でした。
日本人としての矜持を感じるところかと。
書籍名 ふたつの荒野 著者名 尾崎 茂夫 著者紹介 大正09年01月31日(1920)生。昭和12年陸軍士官学校入学。15年上海東亜同文書院大学に転校。留学中に学徒出陣。19年従軍チャムス陸軍特務機関勤務。終戦後ソ連抑留。25年帰国。