トトヤンの家庭菜園

小旅行、読書、TV番組感想、政治への関心、家庭菜園のブログです。(和歌山県)

蓮池薫

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朝日新聞デジタルに載っていた二人の編集委員によるインタビュー。要約すれば、以下のようなことだ。

北朝鮮は、下手な言葉で挑発するやり方はトランプ政権には通用しないと思い直したかもしれない

②日本が圧力重視の立場であることは、今はそれでいい。非核化であいまいな合意をしたら、交渉全体が挫折してしまう。核問題でしっかり米朝が合意した後で、日朝交渉に進めばいい。

③日本は『拉致問題が解決するまでは支援に参加できない』という原則を強調すべきだ。拉致問題の解決は、すべての拉致被害者を救い出すこと

④どこかのタイミングで日本も態度を転換する必要が出てくる。米朝が何らかの合意をしたら、日本も歓迎し、その後のプロセスに関与していくことだ。

⑤安倍首相は、家族会の一人ひとりに会って話を聞いており、中途半端な解決でお茶を濁すことはできない。これまでの経緯もよくご存じで、北朝鮮が何を望んでいるのか、ダメだった点はなぜダメだったのか、十分に分かっている。北朝鮮も安倍さんについては『だませない』との思いがある。

少し前にお兄さんの蓮池透さんが『誰に「直談判?」相手が違うだろ!。トランプ大統領も困惑。怖くて金正恩と正面から会えないんだろ?』とかツイートしていて暗然たる気持ちになっていたが、弟さんの仰っていることはまことに正論。私のかねてからの意見とほぼ同じだし、安倍首相の最近の方針をだいたい支持されているようで安心した。

朝日新聞がこれを掲載したことはクオリティー・ペーパーとしての遺産と良心がなお消滅していないということだろう。ただ、この蓮池さんの意見が自社のポジションとへだったものであることについて解説くらいして欲しいと思う。

このほかにも、注目すべき指摘があるが、箇条書きにすればこんなところだ。

①従来の米国と違ってトランプ米大統領は『北朝鮮を完全に破壊する』と非難し、制裁強化などをした。北は核兵器が完成しても体制の安全は確保も経済の立て直しも困難と判断した。

北朝鮮の悩みは電力不足。効率のいい石炭火力や送電網の整備を日本が提供するのはありうる。

金正恩が、国内を説得できる形が必要だ。

金正恩は父・金正日の時代よりも自由市場をうまく利用している。

⑤戦端が開かれれば、『敵か味方か』の論理に社会が極度に支配された状態で、北朝鮮政府が日本の拉致被害者を生かしておこうと思い続けるのか危惧する

ちなみに、私の北朝鮮問題についてのポジションは、こんなところだ。

これまで、中国・韓国・ロシアなどに仲介を頼むといったことをしてきたのは賛成できない。彼らが真剣に交渉してくれるはずがないから、北と直接に話さないと解決はしない。

ただ、金正恩になってからは核問題が焦点になっており、日本は拉致で満足いく反応を得ても制裁を解除できない。その意味では、交渉でやれることは限られている。

そういう状況では最大限の圧力をかけて核問題を一挙に解決しようというトランプ大統領の方針は願ったり叶ったりである。安倍首相はトランプのアドバイザーに徹するとともに、核が解決したら経済協力はしてアメリカに負担がないように協力するが、拉致も一緒でないと参加できないから金正恩に拉致で安倍の希望を叶えろといわせるのに全精力を傾けることは正しい。

何を持って拉致が解決だというか、関係者処罰まで譲れないといったハードルが高すぎる要求にこだわるのは疑問で、アメリカにも現実的対応を説明する必要がある。

核と拉致が解決したら、むしろ、北は日本にとって友好国になりうる。国境を接してないから脅威にならないからだ。また、金正恩一家は母親のこともあり日本文化に好意的だ。また、ここのところは保守派の人は違う意見だろうが、朝鮮総連は北の体制のなかでは「親日派」なのだからむしろ利用価値がある。

いずれにしても、シンガポール会談はこれまでにない形の決戦だ。もしこれでうまくいったら、ある意味で、外交の常識が変わるだろう。

トランプには安倍首相というアドバイザーがついているのはまことに好ましい。それに対して。金正恩に適切なアドバイスがいないのが辛い。習近平でもプーチンでもダメだ。文在寅は金正恩から結果を聞かせてもらったらいいのであって、うろちょろしないで欲しい。彼が何者かであろうとすれば、交渉は失敗するだろう。そこがちょっと心配だ。

 


拉致被害者の兄である蓮池透氏がヒステリックといわれてもしかたない罵詈雑言を、安倍首相に対して浴びせているのに対して、本人の蓮池薫氏のほうは、実にバランスのとれた貴重な意見を朝日新聞紙上で述べておられることは、すでに『蓮池薫氏の「100点満点」の北朝鮮解説が朝日新聞に掲載』で紹介した通りである。

その蓮池氏が今度は『週刊新潮』で米朝会談について論評されているので、紹介しつつ解説したい。まず、蓮池氏は米朝会談についてこんなことをいっている。

①非核化が具体性を持たなかったのは信頼醸成から始めなくてはならなかったのだから悪くない

②トランプが拉致について提起したことは、その重要性を金正恩に意識させ、トランプにもインプットされたということだから意味がある。また、トランプが提起したので、日本が拉致が未解決であることを理由に経済協力を拒否しても批判されない。

③「安倍3選」など政治的に利用されても結果を出してくれれば構わない。

北朝鮮は中国への過度の依存から抜け出たいと思っているので、日本との関係強化には大きな意味がある

蓮池氏は横田めぐみさんの生死について、「生きているとは断言はできない」が、「1993年にめぐみさんが入院のために自分たちの近所から消えた後も、娘のヘギョンさんや夫はしばらく同じところにいて付き合いがあったし」、「その後も2002年の帰国まで音信あったと明かし、そういうなかでめぐみさんが死んだと聞かされなかったことは不自然」であり、そういう意味で希望はあるとしている。

めぐみさんの生死については、一方で亡くなっていると断言する人もおれば、必ず生きておられるという人もいるが、いずれも極端すぎて真摯な議論たのためには有害である。「合理的に考えてチャンスは十分にある」という蓮池氏の説明が腑に落ちる。

拉致問題で大事なことは生きておられる方の生還を実現することであり、万が一、本当に亡くなっておられるかたがおられたとしたら、納得できる説明を聞くことである。日朝関係を将来ともに悪くすることに使うとか、復讐は目的ではないはずだ。

また、長く北朝鮮で暮らされた蓮池氏が「北朝鮮が中国依存を嫌がっている」と指摘されているのは、貴重だと思う。

逆にいうと、いま、習近平はトランプの大胆なアプローチの結果、劇的に米朝が近づいて、鴨緑江に米軍がやってくるのを心から恐れているはずだ。いわば、北朝鮮ウクライナ化である。